Happy Rug Market

【連載】ラグのある暮らしを訪ねて。vol.04 写真家・小澤彩聖さんと「HOTEL K5」支配人・渡邊加奈子さん

【連載】ラグのある暮らしを訪ねて。
vol.04 写真家・小澤彩聖さんと
「HOTEL K5」支配人・渡邊加奈子さん

下町の風情を残しながら、古い倉庫や工場を改装した個性的なカフェやショップが立ち並ぶ、東京・蔵前エリア。新旧の文化が混ざり合うこのまちには近年、さまざまなクリエイターやアーティストが集まり拠点を構えています。写真家の小澤彩聖さんと、マイクロコンプレックス施設「K5」の支配人を務める渡邊加奈子さんがここで暮らし始めたのは、およそ2年前のこと。そんなふたりの暮らしぶりをうかがいました。

フロアライフコンシェルジュ

濱口 知大

濱口 知大ブランドマネージャー

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ライフスタイルが異なるふたりの、新しい暮らし方

ライフスタイルの異なるふたりの、新しい暮らし

小澤さんと渡邊さんが暮らしているのは、隅田川からほど近い、古い街並みが残る住宅街にあるリノベーションマンション。天然木の天板が印象的なカウンターキッチン、グレーがかったネイビーの木枠の内窓、白壁に無垢板のフローリング……。街並みと対照的な、洗練されているのに居心地がいい空間がふたりの拠点です。この部屋に住むことを決めたのは今から約2年前。いわば“一目惚れ”だったと渡邊さんは言います。


「北欧スタイルのインテリアが好きで、すごく合いそうだなって思ったんです。シンプルでかわいらしいのに、上質で、本質的で。私が支配人をしている『HOTEL K5』は築100年の銀行をリノベーションした施設なんですが、その内装を手掛けたインテリアデザイナーの方から北欧デザインの考え方をよく聞いていたんですよね。あと、上階にオーナーさんご一家が住んでいて、顔と顔が見えるコミュニケーションを大事にしているのもすてきだなと思いました。でも本当は、彼の勢いでいつのまにか決まっていたという感じです(笑)」

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聞けば入居前、なんとオーナー向けにプレゼン資料まで作成したとのこと。不動産紹介サイト「東京R不動産」で見つけ、内見後のその足でカフェで資料を作成し、すぐに申し込み。その甲斐あって無事に入居が決定しました。ただし単純な“同棲”というわけではなく、都内で働く渡邊さんがこの部屋に住み、小澤さんは複数の拠点を行き来するというのがふたりのライフスタイルです。


「僕はカメラマンという仕事柄、出張が多くて。東京にはここのほかにもうひとつシェアハウスを借りていて、広島県尾道市にもほぼ毎月通っています。なので、全部で3つの拠点があるという感じですね。ただ、自分の中では“帰る場所”はやっぱりここなんです」

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リビングを見渡すと、壁には絵画やポスター、棚には陶器やキャンドルと、さまざまなインテリアアイテムが並んでいます。「いつも照明が変わっていたり、壺が増えていたり、帰るたびに変化している(笑)」と小澤さんが言えば、「彩聖くんは国内外で本やお皿を買ってくるから、収納スペースが欲しい」と渡邊さん。それぞれの私物がセンス良くレイアウトされる中、ふたりで相談して取り入れたのが、部屋の中央に置かれた大きなテーブル。


「私も彼も常に動いていたいタイプなので、ふたりで暮らすまでは大きな家具を購入したことがなかったんです。でも、私が『K5』の開業でご一緒したデザイナーさんが、『暮らしの中心に思い入れのあるテーブルがあるのは大切なこと』と教えてくれて。その方が図面を書いて、木工職人の方も紹介してくれました。それこそ木材を選ぶところからつくった、オーダーメイドのテーブルなんです」

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素材、形や色、大きさをふたりで吟味して完成したのが、桜の木でつくられた、ミニマルなダイニングテーブル。部屋の雰囲気にデザインを合わせたのはもちろんのこと、「経年変化」を考えてつくっていったと渡邊さんは言います。それは、長く使うことで味わいが増すということだけではありません。


「大きいテーブルなので、みんなで食を囲むこともできるし、それぞれが作業をすることもできます。それに今後、家族が増えることだってあるかもしれません。用途も、使う人も変わっていって、人生を定点観測するように、このテーブルが人生そのものを物語るようなものになる、そんなことを考えたんです」

ライフステージの変化で、暮らしを愛でる生活へ

ライフステージの変化で、暮らしを愛でる生活へ

このテーブルの購入を検討したのは、交際を始めてから2か月が経った頃のこと。「まだ付き合い始めたばかりで『子どもができたとき』という話が出たので、すごいプレッシャーでした(笑)」と小澤さんは振り返ります。続けて「あのとき、すでに決まっていたのかもしれませんね」。というのも、実は渡邊さんは現在、妊娠中。今、ふたりの生活は劇的に変化している最中なのだそうです。


「つわりが重くて、ここ数か月は現場に行きたいのに行けない状態だったんです。24時間家で過ごすことが多くなって、見える部分と収納のバランスだったり、窓からの景色だったり、日常生活の中の“家のあり方”を考えるようになってきました。以前ならナチュラルワインを買って、焼いたアスパラにチーズをかけたりして、『私ってできる女』って(笑)。そんな演出だけ考えていればよかったんですけど、もっと暮らしの本質を考えたくなったんです」

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外でアクティブに働き、帰宅して寝るまでの時間を部屋で過ごす生活から、リモートワークをしながら家で長い時間を過ごす生活に。妊娠後、住む場所が快適であることの大切さを実感したという渡邊さん。一方、小澤さんにも暮らし方に変化がありました。パートナーが妊娠する中で「自分に何ができるのか」を考えるようになり、料理や掃除などの家事をするようになったと言います。


「そもそも今までの暮らしの中で、シェアハウスで生活することが多かったりもしたので、家で何かをするということがほとんどなかったんです。今は、この部屋での時間が自分をゼロに戻してくれます。ここにきてようやく、加奈子さんとの暮らしや、自分自身を愛でることができるようになりました」

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そんなふたりが自宅で「オフの時間」を過ごすのが、ラグを敷いたスペース。部屋の一角を棚でゆるやかに区切り、ソファを置いてくつろぎの場をつくっています。この場所で、本を読んだり音楽を聴いたり、壁面をスクリーンにしてプロジェクターで映画を観たり。桜の木のテーブル同様に、このラグも新居に合わせて取り入れたものだと渡邊さん。北欧のインテリアブランド「HAY」で購入したそうです。


「リノベーション物件って、部屋が用途ごとに仕切られていなかったりしますよね。それに、うちはテレビも置いていないですし、足元にぬくもりのあるスペースをつくって、オンとオフのメリハリを付けたかったんです。このラグは、ショップで見つけたときに、私たちの暮らしに合いそうだなと思って。いろいろなものがある家だから、すごく洗練されているものよりも、シンプルだけど、ちょっと個性があるデザインを選びました」

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落ち着きのあるベージュに、ところどころに色味の入った「ちょっと子どもがクレヨンで落書きした感じ」がお気に入り。木製の家具や鉢植えのグリーンにファブリックが加わることで、“異素材感”が出るのも取り入れた理由のひとつ。頻繁に模様替えをするという渡邊さんも、このスペースにはそれほど手を入れていないそうで、たしかに、ふたりの好きなものがさまざまな場所に置かれた部屋にマッチしています。


このラグは、ふたりが初めて取り入れた記念すべき1枚目。ふたりで過ごすときはくつろぎの場であり、ホームパーティではゲストの居場所であり、いずれはキッズスペースにもなるのかもしれません。「そう考えていたわけじゃないけれど、子どもが本当にクレヨンで落書きしても大丈夫(笑)」と渡邊さん。

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ちなみに、Happy Rug Marketのアイテムの中でふたりが気になったのが、ギャベ柄のラグ。「大きな面積の柄ものを取り入れたらどうなるんだろう」ということで、試しにテーブルの下に敷いてみると部屋の雰囲気が一変。疲れていると帰宅してすぐに床で横になるという小澤さんも「ここで寝てしまいそう」とのこと。もしかしたら今後、テーブルと同じように、ふたりの生活をさまざまなラグが彩り、その時々の人生の状況を物語るものになっていくのかもしれません。

変わりゆくパートナーシップが生まれた“始まりの場所”

変わりゆくパートナーシップが生まれた“始まりの場所”

最後に、今後の暮らし方についてふたりに聞いてみると、渡邊さんは「出産で実家に帰っても、この部屋は拠点として残す」、小澤さんは「実家に戻るときに引き払う」とそれぞれの考えがある様子。将来的には自然のそばで暮らしたいという共通の価値観のもと、これからのふたりの暮らしを想像できる選択肢を増やそうとしているところなのだとか。


「深呼吸できる場所に住みたいなってずっと思っているんです。湖畔のおうちに憧れていて、窓を開けたら風が通って深呼吸ができて、朝は淹れたてのコーヒーのおいしい香りがして……。そういう、『生きていてよかったな』っていつも思える場所を拠点のひとつとして持てたらいいなって感じます」


渡邊さんのこの考えに加えて、「そこにコミュニティがあるといい」というのが小澤さんの考え。その背景には、家族写真やウェディングフォトを多く手掛けてきたり、アメリカのディズニーリゾートでキャストをしたりといった経験があるのだそうです。

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「家族が増えることを考えると、僕自身は助け合える友だちが近くに住んでいることも大切にしたくて。僕らは互いに環境や立場がどんどん変わっていく者同士なので、パートナーシップとしての関係を更新し続けて、アジャストしていくことが大切だなと思うんです。だから、どう暮らしていきたいかという話はよくしていますよ」


今住んでいるこの部屋は、いわば、ふたりにとっての“始まりの場所”といえるのかもしれません。そしてここでの暮らしの中で、ふたりがともに気に入っているのが、夜になるとライトアップされる東京スカイツリーが間近に見える景色。


「僕が隅田川に架かる橋を渡って家に向かうとき、スカイツリーを目にすると『帰ってきたな』って感じがするんです。これからどんな生活を送るのかはまだわかりませんが、きっとこの場所を離れても、スカイツリーに思いを馳せる日が来るんだろうなってよく思いますね」