Happy Rug Market

【読みもの】天然素材を人の手で織り上げる、ラグの産地・インドのこと。

JOURNAL by concierge
天然素材を人の手で織り上げる、ラグの産地・インドのこと。

ハッピーラグマーケットで扱っているラグは、日本はもちろん、世界のさまざまな国でつくられています。そのひとつが、インドです。近年は経済成長が著しいといわれる一方、農村部にはかつての伝統が今も色濃く残っており、多様な文化が複雑に入り交じっている魅力的な国です。今回は、インド国内で私たちと一緒にラグをつくってくれている現地のパートナーの様子をご紹介します。

フロアライフコンシェルジュ

畠 あけみ

畠 あけみ インテリアコーディネーター / カラーコーディネーター
リビングスタイリスト / キッチンスペシャリスト

一枚のお気に入りの敷物に出会っていただくためのお手伝いが出来ればとても嬉しく思います。

インドは古くからの「テキスタイルの宝庫」!

インドは古くからの「テキスタイルの宝庫」!

「インド」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? インドカレーはもちろん有名ですし、紅茶の一大産地だったりもします。そして実は、「テキスタイルの宝庫」といわれてきた国でもあるんです。インドでは古くから綿の栽培が盛んで、その高い技術力でつくられた布は大航海時代以降、各国に広がっていきました。もちろん今も「インド綿」は世界で愛されています。


私たちがラグの産地としてのインドに出会ったのは、今からおよそ30年前のことです。以来、日本国内で催される展示会を通して新たな生産者とのお付き合いが生まれては、パートナーとしてともにものづくりを行い、たくさんの魅力的なラグを生み出してきました。その一部は、ハッピーラグマーケットでも取り扱っています。

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もちろん、日本の展示会で生産者とつながったからといっても、現地に行かなければ見られない製品もたくさんありますし、品質を担保するために、実際にラグをつくってもらう前には生産環境を必ず確認します。そのため、私はこれまで3回、インドに渡航して産地の様子を目にしてきました。


最初の訪問では、インドの商社の方の案内で、インド有数の繊維製品の産地・パニパットにある工場を拝見しました。その商社の社長の家にも招かれ、邸内にはさまざまな調度品が並ぶマハラジャのような暮らしぶりに驚かされたり、結局参列はできませんでしたが、1000人以上が集う結婚式に招待されたりしたのはインドでの思い出のひとつです(笑)。

「インド綿」を手仕事で一枚一枚織り上げる

「インド綿」を手仕事で一枚一枚織り上げる

初めて訪れたインドの工場で目にした様子は、まさにカルチャーショックの連続でした。レンガづくりの2階建ての工場に20台ほどの織機が並び、なんとすべてが手織りの機械。工場では糸の染色も行われていて、建物の屋上では染色した糸を日光に当てて干していました。この工場で働く職人たちは、日の出とともに働き、日が落ちたら眠るような、昔ながらの働き方をしていたんです。


また、工場の人々の仕事は、まさに職人技そのものでした。糸の間にすばやくシャトルを滑らせてはリードでトントンと押し込んでラグを織り上げていく職人もいれば、鋼鉄製のミシンを器用に操ってロープを敷物の形に美しく縫い上げていく職人もいます。糸を染め上げたり、仕上がったラグの端糸を一つひとつ処理していくのも人の手によってです。

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そして、おそらく宗教観の違いもあるのだと思いますが、どの職人も、一人ひとりが誠実に自分の仕事に向き合っていました。ラグをつくる多くの工程が手作業であることとともに、彼らの仕事への向き合い方、働き方も、私にとっては大きなカルチャーショックでした。


たとえば、「インド綿チューブラグ」や「ボリュームチューブラグ」、「インド綿ぽこぽこラグ」も、このような職人たちの手仕事でつくられた製品。私たちの「こんなラグをつくりたい」という想いに、現地の皆さんが心を込めて応えてくださいました。インド綿ならではのサラサラとした手触りの良さと、手仕事のぬくもりがきっと感じられるはずです。

ラグに込められた、つくり手と私たちの思い

「インド綿」を手仕事で一枚一枚織り上げる

インド綿のラグとは別に、ハッピーラグマーケットで扱っているインド製の敷物には「インドギャベ」があります。現在取り扱っているのは、全面に柄がちりばめられた「ウール100%インドギャベ」と、ワンポイントで柄があしらわれた「インドギャベ」の2種類(ちなみに、どちらもウール100%なのは同じです)。


ギャベとは、イラン南部で生まれた遊牧民族が羊毛で織る絨毯のこと。インドギャベはいわば、その影響を受けてインドでつくられるようになった敷物です。ハッピーラグマーケットのインドギャベがつくられているのは、ガンジス川近郊の、これも織物で知られるバドイという地方。空港から何時間も車を走らせてようやく辿り着く広大な田園地帯です。

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インドギャベの産地であるバドイには、農家が農閑期になると敷物を織るという暮らしが息づいていました。職人たちの家にはそれぞれ2台の織機が置かれていて、パニパットと同様、すべてが手織りです。私たちがそんな彼らとともにつくっているのは、アルゼンチンウールを使ったオリジナルのインドギャベ。なめらかな羊毛と手仕事で仕上げられた品質の良さは、バドイの人々と私たちの共作ならではです。


私がこれまでインドのさまざまな産地を巡って感じたのは、生産者が真摯につくりあげたラグだからこそ、大切に取り扱っていきたいということ。一枚一枚が、自然とともに生きる環境の中、天然素材を使って、昔ながらの製法で人の手で織られていて……。インド綿のラグもインドギャベも、ぜひその魅力を感じていただきたいと思っています。